セビージャはELにおいて圧倒的な強さを誇るクラブです。その優勝回数は最多の7回。その勝負強さはEL番長と称されるほどです。どのようにして、このような成功を収めることができたのでしょうか?今回はセビージャがELで強い理由を解説していきます。※この記事ではヨーロッパリーグをEL、チャンピオンズリーグをCLと表記します。
セビージャとはどんなクラブ?
まず、セビージャがどんなクラブか軽く紹介しましょう。
『セビージャ』はスペイン南部のアンダルシアの州都『セビリア』を本拠地とし、サッカー専用スタジアム『エスタディオ・ラモン・サンチェス・ピスフアン』をホームスタジアムとして使用しています。過去にリーグ戦を1回、国王杯を5回、ELを7回制しており、セビリアで最も成功したクラブといえます。
また、『セビージャのライバル』は、同じセビリアを本拠地としている『レアル・ベティス』であり、両クラブの対決は『セビリア・ダービー』として知られ、スペインでも屈指の熱く激しいダービーマッチです。そのため荒れた試合になることも珍しくはありません。
セビリア・ダービーは『サッカーの熱狂的なダービーマッチ』でも紹介しています。
セビージャがELで強い理由
セビージャがELで強い理由は以下の5つにあると考えます。
- ラ・リーガのレベルの高さ
- モンチSDの手腕
- ELを重要視している
- ELのレベル
- メンタリティ
レベルの高いラ・リーガ
ラ・リーガは欧州5大リーグに数えられるレベルの高いリーグです。UEFAが発表するカントリーランキングでは1999年以降常に2位以上をキープしています。
スペインのクラブがELに出場するには、そのリーグを上位で終えるか、国王杯で優勝してEL出場権手に入れる必要があります。
セビージャは2001-02シーズン以降は1部リーグにとどまり続け、ほとんどのシーズンを上位で終えており、CL出場権やEL出場権を獲得しています。すなわち、セビージャはELに限らず強い、実力のあるクラブということです。
セビージャを強くしたモンチSDの手腕
ではその強さの秘訣とはなんなのでしょうか。チームが良い結果を得ようとしたら、優秀な監督を招聘して、監督が希望する選手を獲得するプロセスが欠かせません(もちろんそれだけではありませんが)。
ただ、優秀な監督は給与が高く、有力な選手は移籍金も給与も高いことが多いです。セビージャは貧乏なクラブではありませんが、ビッグクラブのような資金力はなく、使える資金は限られています。
『SD(スポーツディレクター)』は選手の獲得や放出、移籍を仕切るなどチームの強化において重要な役割を持っており、強いチームを作るために優秀なSDは必要不可欠と言えます。
近年のセビージャではその役割を『ラモン・ロドリゲス・ベルデホ(通称モンチ)』が担っており、モンチSDはその手腕で限られた資金を有効活用し、チームを強化することに成功しています。モンチSDについては別の項でもう少し詳しく紹介します。
セビージャにとってのELと、大会のレベル
セビージャはELのタイトルを重要なものと考えており、ELで最も成功したクラブとしてのアイデンティティがあります。また、欧州の大会であるELで優勝することで国際的な評価を得ることができ、ブランディングにも繋がります。
とはいえ、セビージャはCLのトロフィーを夢見てない、というわけではないでしょう。それでもCLで何度も優勝している伝統のあるクラブや、オイルマネーで強化されたクラブなどと張り合うには資金が足りません。
各ポジションに世界的な選手を置き、名将を監督に据えることができるのはお金持ちのクラブだけです。現代のサッカーでは『資金力≒強さ』で、CLの頂点に立つのはお金のあるクラブです。
ELは決してレベルの低い大会ではありませんが、CLに比べるとビッグクラブは少なく、競争力は劣ります。そのため、スペインのリーグ戦で上位に食い込む力のあるセビージャにとって、十分に優勝の可能性がある大会です。
潤沢な資金があるわけではないセビージャにとって、ELは現実的に手の届く、そして価値のあるヨーロッパタイトルなのです。
セビージャのメンタリティ
セビージャは『2005-06シーズン』以前は、まだ国際タイトルを手にしたことがありませんでした。それが『2005-06シーズン』と『2006-07シーズン』のEL(当時はUEFAカップ)2連覇により、セビージャは成功体験を得ることができました。それは『2013-14~2015-16シーズン』の3連覇でより強固なものになったはずです。
セビージャというクラブには、この成功体験に裏打ちされた強いメンタリティがあり、選手が変わっても受け継がれているのだと思います。勝つことによって成功体験を得て、さらに勝てるようになる。逆説的にはなりますが、強いから勝ったのはなく、勝ったから強く成長できたのです。
ELの決勝で戦う相手は決して弱くありません。それでもセビージャが勝つのは、セビージャにはELで勝てるメンタリティがあるからだと考えます。
セビージャを支えるモンチSDの手腕
先ほど軽く紹介したモンチSDについてもう少し紹介します。
セビージャ一筋の現役時代
現在セビージャのSDを務めているモンチは、元プロサッカー選手で、現役時代のポジションはGKでした。セビージャユース出身で、1990年にトップチーム昇格し、1999年に現役を引退するまでの9シーズンをセビージャ一筋でプレー。そして引退した翌年にセビージャのSDに就任しました。
2017年に一度セビージャを離れましたが、2019年にセビージャに復帰しています。2023年6月に再びセビージャ離れ、アストンヴィラのSDに就任しました。
無名選手の発掘と選手育成
モンチSDは無名の選手を低コストで獲得し、その選手をセビージャのトップチームで活躍させています。例として『ダニエウ・アウベス』や『イヴァン・ラキティッチ』『クリホビアク』などを無名時代に獲得しています。
さらに、モンチはSD就任後、下部組織の強化を図り『セルヒオ・ラモス』や『アルベルト・モレノ』『ヘスス・ナバス』などの選手を下部組織から輩出しています。
的確な補強戦略と経済的な成功
セビージャは経済的に裕福なクラブではありませんが、モンチはSDは限られた資金を有効活用し、必要なポジションに適切なタイミングで補強することで、チームの戦力を強化しています。これによりセビージャはリーグ戦で上位を争い、ELで優勝を争う競争力を維持しています。
また、モンチSDは選手を安く買って高く売ることで、セビージャに多額の収益をもたらしています。前述の通り、無名の選手を安く獲得し、トップチームで活躍させた後、適切なタイミングで売却することで、セビージャに多くの収益をもたらしているわけです。
セビージャがELで強い理由まとめ
セビージャがELで強い理由をまとめると、以下の通りになります。
- レベルの高いラ・リーガで戦っている。
- モンチSDの手腕によって継続的にチームが強化されている。
- ELを重要視し、クラブのアイデンティティと考えている。
- ELでの成功体験による強いメンタリティがある。