豊富な資金力があることから世界中から有力な選手が集まるプレミアリーグですが、外国人選手は『労働許可証』が発行されなければプレーすることができないため、1つの障壁となっています。本記事ではプレミアリーグでプレーするのに必要な『労働許可証』とはなにか、条件や特例について解説していきます。
※本記事は2023年2月3日時点でFAが公開している情報を参考に作成しています。
プレミアリーグの労働許可証が発行される条件
『労働許可証』を申請するためには『GBE(統括団体の推薦)』を受ける必要があります。GBEはポイント制になっており、6つのテーブルから計算されたポイントが、合計が15ポイント以上になった場合にGBEが受けられます。
6つのテーブルは以下の通り。
- 代表での出場の割合
- 国内リーグの出場の割合
- クラブでの大陸選手権の出場時間
- 前所属クラブの最終リーグ順位
- 所属クラブの大陸選手権の順位
- 所属しているリーグの質
なお、テーブル1は、GBEを申請した日から遡って『24ヶ月』、『U21の選手は12ヶ月』を対象期間としており、2~6のテーブルは、GBEを申請した日から遡って『12ヶ月』を対象期間としています。この対象期間中の出場割合や、順位などに応じてポイントが与えられるわけです。
労働許可証のポイントの計算
テーブル1 代表での出場の割合
テーブル1では、代表のFIFAランキングと、代表が行った試合に対する、選手の出場割合に応じてポイントが付与されます。また、『オートパス』に該当する場合は、この時点でGBEを受けられます。
注意点として、ここで使用されるFIFAランキングは通常のものとは異なります。対象期間(24ヶ月12ヶ月)のランキングを平均化したもの(FA発表)です。そのため日本代表は、2023年4月発表のFIFAランキグングでは20位ですが、平均化したFIFAランキングでは24位(24ヶ月)または22位(12ヶ月)となっています。
ただし、代表の全ての試合が対象となるわけではありません。対象となる試合は以下の通りです。
- ワールドカップ本戦
- ワールドカップ予選
- 以下の大陸選手権とその予選
・UEFA欧州選手権とその予選
・UEFAネーションズリーグ
・CAFアフリカネイションズカップとその予選
・AFCアジアカップとその予選
・CONCACAFゴールドカップ
・CONCACAFネーションズリーグ
・フィナリッシマ
・CONMEBOLコパ・アメリカ
・OFCネイションズカップ
親善試合は対象となる試合には含まれませんが、対象期間に代表チームが行った試合のうち、上記の試合が30%以下の場合にのみ、親善試合も対象の試合に含まれます。
日本代表の場合は、平均ランキングが24位または22位なので、オートパスは60%以上、ポイントを得るには20%以上出場しなければいけません。
テーブル2 国内リーグの出場時間の割合
テーブル2では、国内リーグの出場時間(分)の割合でポイントを付与します。リーグごとに『Band 1~Band 6』に分けられ、それぞれ付与されるポイントが異なります。また、ユース選手はトップチームでデビューした際も、ポイントが付与されます。
なお、J1リーグは『Band 5』です。
対象期間に複数のクラブでプレーした場合や、複数のクラブでユースがデビューした場合など、複数のポイントを得られる場合は、ポイントが高い方を優先します。
例えば『Band 3』のリーグで30%の試合に出場し、その後『Band 2』のリーグで30%の試合に出場した場合は、4ポイントが付与されます。
テーブル3 クラブでの大陸選手権の出場時間
テーブル3では、所属するクラブでの大陸選手権の出場時間の割合でポイントを付与します。大陸選手権ごとに『Band 1~Band 3』に分けられ、それぞれ付与されるポイントが異なります。
Jリーグのクラブが出場するACLは『Band 3』に該当するため、最高でも2ポイントしか付与されません。
テーブル4 前所属クラブの最終リーグ順位
テーブル4では、前所属クラブの最終リーグ順位に応じてポイントを付与します。前所属クラブとは、ラストシーズン(※)終了時に所属していたクラブです。ラストシーズン終了時にどのクラブにも所属していない場合、このテーブルでポイントは得られません。
※ラストシーズンとは、GBE申請日より前のシーズンで、直帰の1シーズンを指します。
Jリーグの場合は、Jリーグは『Band 6』に該当し、ACLは『Band 3』に該当するため、優勝で1ポイント、ACLのグループリーグ出場権獲得で0ポイントが付与されます。
テーブル5 前所属クラブの大陸選手権の順位
テーブル5では、前所属クラブの大陸選手権の順位に応じてポイントを付与します。
テーブル6 現所属クラブのリーグの質
テーブル6では、現在所属しているクラブのリーグの質に応じてポイントが付与されます。レンタル移籍していた選手がレンタル元に戻ってプレーした場合は、レンタル先かレンタル元のどちらかポイントの高い方が付与されます。
労働許可証の例外パネル
テーブル1でオートパスの条件を満たしていない場合や、各テーブルの合計ポイントが15未満の場合でも、例外パネルを要請することによってGBEが付与される可能性があります。
例外パネルは、以下の条件のいずれかを満たした場合に要請できます。
- 10~14ポイントを獲得しており、例外的な事情がなければ15ポイントを達成できたことを証明できる場合。
- ユース選手であり、その選手が大きな可能性を示し、イングランドの競技の発展を促進するのに十分なクオリティを持っていることを証明できる場合。
ポイントが9以下かつユース選手でない場合は、例外パネルを要求できません。
ESCプレイヤー
例外パネルでGBEを取得できなかった場合でも、『ESCプレイヤー』として認められればGBEを取得できます。
『ESCプレイヤー』として認められるには、以下の条件のいずれかを満たしている必要があります
- FIFAランキング50位以上の国の代表チームで、1試合以上出場している。
- FIFAランキング50位未満の国の代表チームで、5試合以上出場している。
- Band1~Band5のリーグ戦で、5試合以上出場している。
- Band1~Band3の大陸選手権で、1試合以上出場している。
以下、ユース選手のみ。
- Band1~Band5のリーグのユース大会で、5試合以上出場している。
- UEFA、CONMEOL、CAF、CONCACAF、AFC、OFCのいずれかの協会が主催するユース大会で、1試合以上出場している。
ESCプレイヤーの枠数
各クラブに与えられるESCプレイヤーの枠数は、そのクラブの『加重EQP分率(Weighted EQP Minutes Percentage)』によって決まります。『EQP(English Qualified Player)』とは、イングランドで育成されたか、イングランド代表としてプレーする資格がある選手のことを指します。
『加重EQP分率』は、クラブが『EQP』を対象となる試合でどれだけ起用したかの割合を数値化したものです。
『加重EQP分率』により与えられるESCプレイヤーの枠数は以下のとおり。
2023/24シーズン
※2023/24シーズンは、『加重EQP分率』に関わらず最低2枠が与えられます
2024/25シーズン以降